うつ病の子どもの進級、進学、中退、転校に対する考え方

うつ病の治療中、重大な決断は行わない

うつ病の治療中は心身ともに疲れきっている状態です。そんなときは正しい判断はできません。決断したとしてもあとから後悔して将来が不安になることも多いです。これは大人のうつ病にもいえることです。
転校や退学など、進路に関わる決断はできるだけ先延ばしにし、学校に在籍しておきましょう。
休んでいる間も学校と密に連絡をとりあうと、子どもも疎外感が少なくなり、学校を休むことへのあせりが軽減されます。

進級や進学に支障が出る前に学校に相談

高校生の場合、進路によって重要になるのが、卒業単位の取得です。
治療のために、進級できない、卒業単位が足りないなどの問題が発生してしまうこともあります。
休学中の対応や単位取得のルートなど、どこまで譲歩できるかは学校によってまちまちです。
単位制高校の場合は、学年の区分がないため、自分のペースで単位取得の計画を立てることができます。

 

休学が長くなり、進学や進級の時期にさしかかりそうなときは、事前に学校と相談しておきましょう。
授業への出席の代わりに、レポート提出や学校外での学習活動などで、単位をもらえる場合もあります。
また、もし今の学校を卒業できなくても、別の方法があるので、慌てず主治医と相談し、子どもを安心させましょう。

通信制高校、高認など選択肢はいろいろあります

落ち着いて治療に専念するためにも、進路の選択肢はたくさんあることを親子で知っておきましょう。
「サポート校」に通いながら「通信制高校」で単位を取得し、高校卒業や大学受験を目指したり、予備校で勉強して「高等学校卒業程度認定試験(高認)」を受けるなど、自分にあった学び方を選べます。

進級・進学に役立つ制度

中学校卒業程度認定試験
  • 病気や、やむを得ない事情で中学校の義務教育を免除、猶予された子どもを対象に中学校卒業程度の学力があるかどうか認定する試験です。
  • 国が行う試験で、合格すれば高校への入学資格が与えられます。
高等学校卒業程度認定試験(高認)
  • 国が高校卒業程度の学力を認定する試験です。合格すれば希望する大学、短大、専門学校の受験ができます。
  • 各種国家試験や就職においても、高卒あつかいになります。
学校外施設への通学による出席あつかい
  • 不登校のために単位取得が難しい場合、学校以外の該当する施設で指導などを受けた日数を「出席あつかい」とする制度です。
  • 期間中に保護者と学校の間で密にし協力関係を保つことがポイントになります。
ITを活用した学習活動の出席あつかい
  • 不登校児童の支援のため、インターネットやファックス、郵送などの方法で学習指導を受けることを「出席あつかい」とする制度です。
  • 保護者と学校の連絡が密で協力関係が保たれている、そして計画的な学習プログラムであることなどがポイントです。

役に立つ教育機関

適応指導教室 対象:小学生〜中学生
  • 小・中学校の不登校生徒を対象に、各市区町村の教育委員会が開いている教室です。公の施設内に部屋を設け、対人関係づくりや体験学習を行いながら、学校への復帰を目指します。
  • 一部では、個別に教科指導も行なっています。
  • 指導は、主に退職した元教員や教育センターの職員、学生ボランティアなどが担当しています。
  • ここへの参加は学校の出席と同等と扱われます。
  • 精神科医や臨床心理士によるカウンセリングが行われることもあります。
フリースクール 対象:小学生〜高校生(高校生を以上を受け入れている施設もあります)
  • 不登校生徒、あるいは子供中心の自由な教育を求める生徒を対象に、学習活動や居場所の提供を行う施設です。フリースペースとも呼ばれ、現在全国に400校以上あるといわれています。
  • その規模や活動内容は千差万別です。
  • 正規の学校ではないため、学校の卒業資格は得られません。ただし、在籍する学校長の裁量により、フリースペースへの通学期間を出席扱いにできるようになっています。
通信制高校 対象:高校生以上
  • 主に自宅で学びながら、週1日から2週に1日といったペースで投稿し、面接指導(スクーリング)を受けます。
  • なかには、夏期などに集中して投稿日を設けている学校や、インターネットを利用してのスクーリングを行う学校もあります。
  • レポート作成や試験によって単位を取得することができ、規定の単位数を満たせば高卒の資格を得ることができます。
  • 学校数は年々増加の傾向にあります。
  • 学校ごとにさまざまなコースがあり、「大学進学コース」や「高卒認定コース」、「音楽コース」、「福祉コース」など、自分で選択できます。
  • 自宅での独学のケースは容易ではなく、途中で挫折してしまうことも多くあります。そのため、「サポート校」に同時入学するケースも増えています。
サポート校 対象:高校生以上
  • 通信制高校などに在籍する生徒に対して、単位取得や進級などをサポートする民間の教育施設です。通信制高校と提携している場合が多いです。
  • 高等学校としては認定されていないので、サポート校への通学だけでは高卒資格を得ることはできません。
  • 年々学校数は増えています。
  • 通信制高校などで課題として出されるレポートの指導や授業、試験対策など、学習面のサポートが中心です。
  • 学習面のサポートが中心ですが、生活面・精神面でのフォローも行います。
  • 通信制高校とサポート校で、学費が二重にかかるため、経済的負担は大きくなります。
定時制高校 対象:高校生以上
  • 夜間と昼間があり、公立では4年制、私立では3年制の学校が多いです。
  • 学校数は減少傾向にあります。
  • 15歳以上なら入学可能なので、働きながら学ぶ社会人の生徒も多いです。
  • 1日4時間の授業が行われるが、カリキュラムは全日制と変わらない学校が多く、全日制と同じ高卒資格が得られます。

うつ病の子どもの進級、進学、中退、転校に対する考え方関連ページ

不登校や登校拒否「学校に行けない」原因や対策-子どものうつ病
不登校や登校拒否といった学校に行けない子どもの原因や対策を示します。
子どものうつ病 復学について
うつ病の子どもの復学のタイミングは慎重に行いましょう。具体的な方法を示します。
子どものうつ病といじめ
うつ病の子どもはいじめにあいやすい傾向にあります。また、いじめがきっかけでうつ病になることもあります。その対策を示します。
子どものうつ病とPTSD
天災や恐ろしい事件を体験し、以後続いて起こる特徴的な症状をPTSDといいます。PTSDとうつ病にも密接な関係があります。
子どものうつ病とADHD
集中力や注意力がなかったり、衝動的な行動をとるといった特徴的な症状をADHDといいます。ADHDとうつ病にも密接な関係があります。
うつ病の子どもに起こる日常生活の問題
うつ病の子どもに起こる日常生活の問題とその対策を示します。
うつ病の子ども 睡眠障害の問題と対策
うつ病の子どもに起こる睡眠障害の問題とその対策を示します。
うつ病の子ども 食欲がない・過食
食欲がない、または過食といった、うつ病の子どもに起こる摂食障害の症状とその対策を示します。
うつ病の子どもが起こす暴力や反抗への対処法
うつ病の子どもが起こす暴力や反抗への対策を示します。
うつ病の子ども 引きこもりになったら
うつ病の子どもは引きこもりを起こすことがあります。その対策を示します。
うつ病の子どもが出す自殺・自傷行為のサイン
うつ病の子どもが出す自殺・自傷行為のサインです。見逃さないようにしましょう。
うつ病の子どもが自殺未遂・自傷行為をした時の対応
うつ病の子どもが自殺未遂・自傷行為をした時の対応です。